かっこいいおばあちゃんが歩く海辺の街
頭はスカーフで覆い、ストールを羽織り、七枚重ねの膝上スカートを纏ったスタイルはナザレ伝統の民族衣装。この衣装を着て海辺を歩くおばあちゃん達は迫力満点。背筋も伸びて若々しい。リスボンからはバスで2時間ほどの海辺の街、ナザレ。
銀の海岸と穏やかな街
日本とはちがって頭はそのままの小ぶりな干物が並ぶ海岸、コスタ・デ・ソル(銀の海岸)。ここはサーファーも喜ぶ高波が押し寄せるのに風は弱く、穏やかな海辺。干物を売る女性やベンチで仲良く語るおじさん達がいたり、波を見つめる犬がいたり。年配者が多くゆったりとした街の雰囲気は、老後に暮らしたいなと思うほど穏やかな楽園。
中も外も絶景が広がるナザレの街。世にも美しいマリア像
シティオ地区の展望台からはナザレビーチと赤い屋根の街並みが砂浜をはさんで、赤、黄、青の三原色で目にせまる。さすがは展望の国ポルトガル。
ただ、ナザレの絶景は外だけではない。展望台横にぽつんとある小さなメモリア礼拝堂にもぐるように入っていくと、青のアズレージョと優しい顔のマリア様が微笑んでいる。そしてもうひとつ、それはそれは美しいマリア様がいるのがノッサ・セニョーラ・ダ・ナザレ教会。しばらく見とれてしまう華麗さ。
12世紀の城主が、聖母マリア様のご加護によって、崖から海に落ちそうになったのを助けてもらったという絵がアズレージョにも教会の中にも描かれている。
迷宮の美シントラの緑の世界
シダ植物、コケ、熱帯植物、生き物の彫刻、猫…。人は住んでいなくとも荘厳な小宇宙ができあがっている緑深いシントラ。宮殿や城、迷路のような地下通路が点在する中で、はっとおとぎ話に入ってしまったような錯覚をおこさせるのがレガレイラ宮殿。いったいどんな人が住んでいたのだろう。知ればしるほど謎が生まれてきそうな場所。
レガレイラ男爵の館
動物をモチーフにしたタイルや彫刻にならんで黄金比率や秘密結社、十字軍、あまたのシンボルが見つかる館内は、一人ではいられないような怖さもある。まさに紐解けないミステリーにひっぱられてゆくような気分に。細やかな細工にも動植物の美が込められていて、シントラの街にはいった時から目が離せないものばかり。人間業とは思えない、やはりここだけの宇宙を見せつけられる。
異国だからというだけでなく、時空を超えた宇宙を体感する感覚は、栄えある歴史をもった土地でしか生まれない。